近頃『Z世代』という言葉を、割とよく見かけるようになった。
Z世代、意味合い的には『1996年~2012年に生まれた世代』の事を指す言葉だ。
だが最近はその意味を超えて、“扱いの分からない世代”とか“付き合い方の分からない世代”とか、歯に衣着せねば“使えない世代”という意味を含みつつあるように思える。
だが、本当にそうだろうか?
そもそも世代間格差なんて、どの時代でも当たり前だった。
それが、最近では言葉としては聞かなくなった、けれどどの時代も共通して存在する概念。
『最近の若いモンは』
である。
うん、今年の流行語とかなら毎年変わるし知らない言葉も山ほど出てくるが、人類史の流行語を考えるのであれば、古代ギリシャから続く『最近の若いモンは』というのは中々の上位に来るのではないだろうか?。
だが、同時に世界では、これを埋めるコミュニケーションツールもまた存在した。
そう、それが『酒』であり、『飲み会』というやつである。
うん、コミュニケーションの取り方は他にも無数にあるが、それはそれとして『酒』というのは便利な道具だったし、『飲み会』というのは胸襟を開く場として長年に渡って利用されてきた。
無礼講にも限度はあるが、それでも多少の事ならば『酒の席の話だ』で飲み込まれる事も少なくなかった。
――が、近年それが通用しない世代が現れた。
そう、いわゆる『Z世代』というやつである。
彼らは飲み会に参加しない。
『コスパが合わない』とか『今日は行きません』で断られてしまう。
すると、コミュニケーションの万能ツールとして飲み会を使ってきた世代は、困ってしまう。
仕事の場では出来ない話をしたい、話を聞きたい、そうは思ってもその場に出てきて貰えない。
この戸惑いが大きくなり、戸惑った末に、最終的には『話が出来ない相手』となってしまう事も少なくない。
しかし、それは残念な話だ。
おそらくどちらの世代も、進んで仲違いしたいとは思っていない。
ただ、上手く嚙み合わないので諦めているだけだ。
人は誰かと付き合う時、必ず自身の価値観や経験を元に、『期待している反応』や『想定している反応』というものを作っている。
だが、それと違いすぎる反応が返ってきてしまうと、どう反応して良いか分からなくなる。
これが『噛み合わない』原因だ。
要は『情報不足』に過ぎない。
そんなわけで今回は、そんな情報不足を少しでも埋めるべく、Z世代と上の世代、それぞれの価値観を整理していってみたい。
- 飲み会に対するコスト評価の差
- なぜ『飲み会=ローコスト』だったのか――かつての職場環境という前提
- Z世代はすぐやめるは本当か? Z世代の労働意識
- ではZ世代を飲みに誘うには?
- まとめ
- 📘AI共読のススメ
飲み会に対するコスト評価の差
まず、Z世代の言うところの『コスパが悪い』という部分から、『飲み会のコスパ』を考えてみたい。
うん、上の世代は『そんなの考えた事が無い』と思うかも知れないが、実はちゃんと考えているのである。
上の世代も飲み会に対して、『予算・時間・翌日の疲れ』は考えている。1次会で帰る人、2次会まで付き合う人、3次会まで突き進む人、これが分かれるのは『コスト計算の結果』が違うからだ。
上の世代はこの『コスト』に対して、『顔を売る』『空気を読む』『可愛がられる』という暗黙のリターンを計算していた。
『コミュニケーションを取ることによって得られるリターンの期待値』が『コスト』に見合っていたので、上の世代も飲み会に行っていたのだ。
一方でZ世代は、そうした『不確定な期待値』に期待しない。
すると上の世代が期待していたリターンが、Z世代では限りなく0に近くなってしまう。残るのは『予算・時間・翌日の疲れ』というコストだけだ。
文字通り『コスパが悪い』わけである。
なら、その時間で休んだり、趣味にいそしんだり、副業を行ったり、勉強した方が良いに決まっている。
上の世代は、『いやそれでも付き合いによって得られる物も』と思うかも知れない。
だが、私は割と飲み会には顔を出す方だったが、10人・20人の懇親会となった時、多くの場合発生するのは、3~5人くらいの集団に分かれて“最近の仕事の話題で盛り上がる”とか“昔話に花が咲く”とか“説教が始まる”とかである。
更にはその中であぶれて誰とも殆ど話さない、という事も十分にあり得る。
得られる物は実に乏しい。
この場合、飲み会で得られるのは『参加した』という事実のみとなってしまう。
・数時間拘束される
・翌日に疲れが残る
・得られる情報や人間関係が不確実
上の世代は、得られる情報や人間関係は不確実にせよ、その時にしか得られない物もある、としてここに期待値を見出した。
Z世代は、不確実にしか獲得できない情報や人間関係に、期待値を見出さない。
これは飲み会に限った話ではない。
若年層の「期待値の扱い方」は、他の分野にも表れている。
例えば『宝くじ』なんかでもそうだ。
宝くじは昔は『夢を買う』象徴として人気を誇った。人々はいわば『期待値』を買った。だが、今の若年層はその期待値に夢を見ない。コストはコストと計算する。
すると、当たり前だが宝くじの採算は個人単位では赤字になる。
よって宝くじは売れなくなり……近年、若者の宝くじ離れによって、その売り上げを急速に落としているわけだ。
なぜ『飲み会=ローコスト』だったのか――かつての職場環境という前提
世代ごとに『期待値』に対する考えの変化は分かった。
けれどそれはそれとして、『コミュニケーション』を取る手段として有効なのは変わりないだろ、と私くらいの世代の人は思うのではないだろうか?
それは事実だ。
だが、それも環境によって意味合いが変わってくる。
時代の変化による環境の変化を、ここで少し整理してみよう。
まず、『仕事中の関係構築』は確かにコストが高い。
何せ仕事中は“時間が細切れ”で“互いに気を遣い”、その上に“失敗すると尾を引く”という問題まで発生する。
ところが飲み会なら、“まとまった時間が確保できる”し“気遣いのハードル”も下がる上に、“失敗は宴席の上”で後々笑い話にさえ使えるかも知れない。
『数時間+数千円』の投資で、日常の摩擦コストが長期的に低下する。
これは大変にコスパが良い投資と言える。だがそれは――
・少人数
・固定メンバー
・長く同じ現場で働く
という前提が必要になる。
ところが今のZ世代にはその前提が共有されない。
Z世代の少なくない割合が
・転職の可能性
・同じ人と長く働く保証がない
・人間関係は流動的
という中で生きている。
つまり以前の『数時間+数千円』の投資で、日常の摩擦コストが長期的に低下する。というコスパ計算が成立しないのである。
将来の摩擦低減、というリターンが見えなければ、そりゃあ飲み会にも参加しなくなる。
更に言えば、『ネット環境の身近さ』というのもリスク管理に関わってくるだろう。
私くらいの年代だと、『酒の席の失言』は笑って流されるし、後からフォローも出来るし、翌日に修復も効くのを知っていた。
だがZ世代はセクハラ・モラハラで曖昧なハラスメント判定の話を嫌というほど見てきただろうし、ネットリテラシーが高ければ録音・切り抜きのリスクも考えるだろう。何らかの失態が何かの間違いでネットに挙がったら目も当てられない。
うん、バイトテロとか醬油差しペロペロ事件とかで、承認欲求に振り回される人間が目立つ一方、そのリスクを目の当たりにしてきたのもまたZ世代だ。
そこまで極端な失態でなくとも、ネットは燃料さえあれば燃やす人が発生する。
期待値を多少プラスに見積もったとしても、下振れは地獄だ。
世代によって飲み会のコスト見積もりが変わったのは、環境自体の変化も大きいと考えられるわけだ。
Z世代はすぐやめるは本当か? Z世代の労働意識
さて、Z世代で飲み会以外によく聞かれるのは、『すぐ辞める』という話だ。
うん、転職代行サービスなんて物もある世の中で、確かにそんな印象を受ける人も多いかも知れない。
そんなわけで、具体的なデータは無いかな? と思い具体的データを持っている厚生労働省のサイトから、厚労省が出している 「新規学卒者の離職状況」の資料に、学歴別の「就職後3年以内離職率」の長期推移にのっとって離職率変化のグラフを作ってみた。

※「Z世代帯は出生年定義+卒業年換算による目安」です
これがその推移だ。
こういうグラフは、個々の数値そのものより、“どの時期に跳ねたか”を見るのがコツとなる。
経済的事件と照らし合わせ、変化のポイントに何があったかを押さえるのだ。
まず最初の急上昇、これは『バブル崩壊』の影響で間違いないだろう。
終身雇用神話が吹き飛び、企業側の教育投資も縮小。
『入ったけど、思ってたのと違う』+『会社も面倒見きれない』のコンボで早期離職が増加。
2005年から急低下しているのは、アジア向け輸出が持ち直し、輸出と生産が回復した影響だろか、多くの人が必要になると共に離職率が低下。
2009年に急上昇しているのは考えるまでもない、『リーマンショック』の影響だ。
リーマンショックは2008年9月15日なので、時期的にドンピシャだろう。
一方で、2019年はこれと言って直近に経済的事件が思い浮かばない。
なのに、離職率は明確に上昇している。
おそらくこれが、『Z世代はすぐ辞める』という印象の根源だろう。
だが、経済的事件でない話なら思いつく。
それは『働き方改革』だ。法的な制度としてスタートしたのは2019年4月1日、最初は大企業から適用が始まり、中小企業に施行されたのは2020年4月1日、無論その前から検討時期はあったのだから、これがZ世代の労働観に影響を与えたことは想像に難くない。
つまりZ世代が離職しやすい理由は、『働き方改革』に伴う価値観の地殻変動のせい、と考えられるわけだ。
うん、従来の価値観を刷新した『ワークライフバランス』とか限られた時間での『生産性の向上を目指す』とか『個人のライフスタイルに合った働き方』とか、Z世代の行動方針と重なるのではないだろうか?
つまりZ世代とは、少なくとも制度上は『政府が要求した社会人像』を実行している世代なのだ。
(おそらく最後に離職率が低下しているのは、新型コロナ流行による、転職リスクの増加によるものではないだろうか)
こうして整理してみると、世代間の主な衝突要因は『価値観の違い』でさえなく、前提条件の違いを共有できていない、という時代の変化であると見て取れる。
Z世代に『昔はこうだった』と説く事も、上の世代に『今は違う』と切り捨てる事も、どちらも生産的ではない。
必要なのは、『どの環境では、どの行動が“得”になるのか』という前提条件の共有だ。
ではZ世代を飲みに誘うには?
前提条件を共有しようにも、『共に話す時間を作れなければ、共有できない』という問題はそのままだ。
というわけで、ここまで整理したところで原点に立ち返り、おそらく一番聞きたいであろう話し、『で、どうやって誘えば良いんだ?』について考えてみたい。
ポイントは『コスパ』だ。
うん、今も昔も人はコスパが良いと期待できる方に動いている。
ならば、Z世代にも『コスパ』を示せる事が飲みに誘える条件になる。
人間関係のコストは、主に3つに整理できる。
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学習コスト(仕事の習得速度・暗黙知へのアクセス)
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修復コスト(ミスの取り返し・助け舟の出しやすさ)
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摩擦コスト(日常のストレス・無駄な確認、説明)
ようは、『飲み会に支払うコストより、この3つのコスト圧縮の方が大きい』と考えさせることが出来れば、Z世代が飲み会に参加する可能性が上がるわけだ。
更に言えば、『人間関係を強化する』メリット自体も、彼等は考える。
彼等はそれを無視しているわけでは無い、実際、名目が明確である『歓迎会』や『送別会』なら、彼等も参加率は高いのではないだろうか? 単に、漠然とした『懇親会』では理由が弱いのだ。
であれば方針は簡単だ。
得になる飲み会を計画すれば良い。条件はザっとこんなところだろうか?
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目的:明示(雑談/情報共有)
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時間:短時間(1〜2時間)
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人数:少数(3〜5人)
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退出:自由
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強制:なし
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酒:必須でない
ハッキリ言おう、『出やすい会議』をベースに考えるのだ。
まず、『目的を明示されていない会議』なんて誰も参加しない。
次に、『拘束時間不明の会議』なんて逃げられて当然だ。
更に、『無駄に大人数が集まる会議』は自分が参加する意味が薄れる。
最後に、『議題が終わったのに続く会議』なんて出たい人間はいない。
後は、参加に強制力を持たせず、飲み会という体ではあるが酒も別に飲まなくてよいとする。
うん、そもそも酒は『無礼講の言い訳』のようなものだ。
考えてみよう、費用的には『酒を飲まれない』方が安くつくのだ。酒を断られることを、何も不満に思う必要などない。
『得られるものが明確である』となれば、コスパは改善する。
というか、前々から思っていたのだが、そもそも『部署全員が一か所で宴会をする』必要などどこにあるのだろうか……いや、私も『大宴会』はやったことがある、だが、特別にそういうイベントでもないのに全員集める意味がない。
『普段は無い交流を』と言ったところで、どうせ知ってる人間で固まるのだ。
むしろ、3人~5人くらいで小分けにして、バラバラに飲みに行かせて交流を持たせた方が良いのではないだろうか?
無論、『大宴会』にも価値はある。
それは『後からの話題性』だ。
『あの時の』から話始められる、全員が共通して持っている話題。これは話の取っ掛かりとしてコスパが良い。
だが、そんなのはせいぜい1年に一度か、さもなくば数年に1度で構わない。
うん、時代が変わっているのなら、宴会のスタイルも変えても良いのではないか、と私は提案するわけだ。
まとめ
そんなわけで、飲み会に対する世代間の意識の差を、少し整理してみた。
これはハウツー記事ではない。
経験談でもない。
というか、私はZ世代と共に仕事をしたことがそもそもない。
単に、ネットに流れている情報や、ChatGPTに集めてきてもらった資料に、人の行動原理を当て嵌めて整理しただけの記事である。
だから、成功を約束する物ではないし、そもそも職場の人間関係を『何も聞いてない第三者』が想定しきれるわけもない。
ただ、『自分とは違う見方をする人がいる』ことと、それはおかしな事ではないのだ、というのは伝わったのではないだろうか?
人間関係は『相手が間違えている』と断じた瞬間に終わる。
だが、状況を整理し、順番に考えていけば、『何故相手はそう考えているのか』は見えてくるものだ。
この記事がZ世代との付き合いに悩むX・Y世代や、上の世代との付き合いに困っているZ世代の人々の一助になることを願っている。
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📘AI共読のススメ
本記事はあくまで『環境変化の整理』として書かれており、個々の疑問や細かい理解を助けるに足るものではありません。
必要な情報が足りない、欲しい前提が不足している、と思われる方は、本記事を取っ掛かりに、各々AIを利用して状況の整理をお勧めします。
ChatGPTリンク
・この記事を要約してください。
https://circulation-thought.hatenablog.com/entry/2026/01/20/050000
・Z世代は聞いたことがありますが、最後にあったX世代・Y世代とは何のことですか?
https://circulation-thought.hatenablog.com/entry/2026/01/20/050000
・Z世代はすぐ辞めると言われますが、その原因を『働き方改革』に求める考えに妥当性はありますか?
https://circulation-thought.hatenablog.com/entry/2026/01/20/050000
・この記事では『出やすい飲み会』と『出やすい会議』を同じ整理にしていますが、飲み会と仕事の整理を同じにした理由は何だと思いますか?
https://circulation-thought.hatenablog.com/entry/2026/01/20/050000